「うわ……先生、素敵♪」
先日、爪を傷めてしまい、ご近所のお医者様のところへ受診に行った時のこと。
中待合室に案内され、目の前にある診察室へ呼ばれるのを待っていた時
心がほっこりする出来事があったのです。
カーテン一枚で仕切られた中待合と診察室。
聞くとはなしに、聞こえてきたのは先生と、ある患者さんの会話でした。
薬が飲めていないのは……
「先生、あんまり調子が戻りません」と、弱々しい年配女性の声がします。
先生が「そうか~。薬はちゃんと飲んでる?
薬を飲まないと良くならないからなあ。」と返事をされると
「お薬、無いんです。この間、出してもらってないから飲めてません」と女性。
「ん? そうやったか? じゃあ私の勘違いやなあ。
薬出しておくから、飲んでよ」
先生は、そう女性に返事をした後、付き添いのご主人でしょうか、
年配の男性に話しかけられました。
「お薬をちゃんと飲めてないと思います。
家族の方がしっかり見てあげて、飲ませてあげてくださいね」
おそらく女性は、お年のせいもあり
自分だけでは服薬の管理が難しい状態にあったのでしょう
(晩年の母がそうでした……)。
先生は、服薬の管理とお世話をご家族に託され
「はい、いいですよ。お大事にね」
と、患者さんを送り出されました。
「病を診ずに人を診る」
「私の勘違いやなあ」
いや、そんなはずはありません。
先生はきちんと投薬をされていたはず。
それを忘れてしまったのは、きっと女性患者さん。
「出してもらってないので、手元に飲む薬がない」と言ったのを、
先生は否定もせず叱りもせず「私の勘違い」と、
患者さんの言葉を受け入れ、自分のせいにして
話を合わせてあげられたのです。
先生、すごい……。と、中待合で私は一人感激してました。
なかなかできることじゃないもの。
昔、仕事でお世話になったお医者様は
「病を診ずに人を診る」ことが大切とおっしゃっていました。
病気だけを診るのではなく、病んで苦しんでいる「人」そのものを
診ること……という意味だと、当時、先生から教わりました。
病だけを見れば、処方した薬をきちんと服用せず、
しかも「もらってない」と主張する患者さんを責めたくなるはず。
でも先生は「人」を診(見)ていらっしゃった。
病、すなわち症状を治すことだけが目的なのではなく、
不調を抱えてしんどい「人」を救うことがゴールだと
考えていらっしゃるのだと思います。
私たちの仕事も一緒です。
商品やサービスといったモノを届けるだけじゃなく
届けたい人をどうしてあげたいのか
どうなってほしいのかをきちんと
視野に入れることが、ホントに大切。
今一度、振り返ってみようと思った出来事でした。。
……あのおばあちゃん、ちゃんと薬を飲めているかな。